第五回 :資産価値の適正な評価システム -物件鑑定方法の標準化

(本レポートは2012年5月 住宅新報に連載されたシリーズの原稿を元にしています。)

米国では建物の担保価値の査定基準の統一化や建物鑑定士(アプレイザー)の資格制度の導入で、リフォームなどによる建物価値の維持、向上が適正に評価される仕組みが普及した。中古住宅の流通促進が実現した要因の1つと言われている。第5回は、米国の建物査定方法の特徴について解説してもらう。   

米国の住宅価格は、過去から現在に至るまで安定的に増大している(第1回グラフ参照)。背景には、人口増加や経済成長のほか、「住宅は手入れをしながら長く使う」国民性や、景観などへの規制を含めた地域そのものの価値を高める取り組みがある。そして建物評価方法の見直しが、住宅の価値を着実に押し上げてきたと言える。

米国の銀行ローンは従来から、個人の信用力を評価した貸出しが一般的だ。ただ、評価方法やライセンス取得がルーズであったことや市場活性化の必要性から1980年代以降、評価基準の確立が求められてきた。民間の不動産鑑定協会と州政府が連携しつつ、建物査定の標準化について検討を始め、1989年には連邦法(FIRREA法01Financial Institutions Reform, Recovery, and Enforcement Act of 1989)に基づく鑑定(アプレイザル)基準の統一化が行われた。また、2009年の01Frank Dodd法では、アプレイザーはローン会社に影響されず、全米で統一化された標準査定フォームに基づき評価するよう徹底されている。査定基準の統一化に併せて、アプレイザーのクオリティ向上の取り組みも進められた。試験制度の厳格化やローン担当者の資格取得必須化などが行われている。

アプレイザーは、ローン会社から鑑定管理会社、AMC(Appraisal Management Company)を通じて発注を受ける。査定手数料は1件当たり約$450が相場で、買い手負担だ。査定はデータ分析や計測、統一評価基準のチェックポイントを見る。適切にリフォーム・維持管理されていれば、たとえ30〜40年以上経った物件でも担保価値を認めてローンを提供している。

この保守・管理や改築による価値の維持、向上が考慮されるのが米国の特徴だ。属性データベース(DB)や履歴DB、性能DBに基づき、近隣の取引事例との比較で評価・査定する。既存住宅の履歴情報DBの充実(第3回参照)が可能にしている。

米国では基本的に、土地と建物を一体的に評価する。日本の戸建て住宅のように土地と建物が別個の基準ではない。また、評価方法を見ても、住宅の築年数が重視され、住宅の質に関係なく一律に資産価値が減少する原価法中心の日本とは異なる。
もちろんこの背景には、地価や土地に対する消費者の意識、建物価値に対する認識など、資産としての住宅に対する考え方が根本的に違うといったことがある。しかし、その価値を査定する項目や要素に著しい相違がないのも事実だ。

前述のように、米国の住宅価格が増大してきた背景には、建物評価方法の見直しが挙げられる。

我が国でも築年数で建物価値を判断する評価基準を見直し、リフォームなどによる住宅の質の維持、向上を適切に評価する消費者にとっても分かりやすい仕組みづくりが必要不可欠であると考える。市場関係者の連携による取り組みにも期待したい。

(2012年6月19日 国土交通省不動産業政策調整官(当時)小林正典)

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