第四回 ;消費者保護のための流通事業者育成システム -継続教育によるスキル向上

(本レポートは2012年5月 住宅新報に連載されたシリーズの原稿を元にしています。)

米国の不動産エージェントは必ずブローカー(不動産会社)に所属契約し、教育トレーニングや賠償保険、マーケティング、リーガルサポートなどの支援を受けながら業務を遂行している。第4回は、米国における不動産エージェントの資格・教育システムについて解説してもらう。  

米国のエージェントとブローカーの関係は完全歩合制になっており、エージェントは営業報酬の約3割をブローカーに納め、様々な支援を受ける。各ブローカーの職場では、エージェント教育が盛んに行われている。

エージェントにとって、営業上必要な情報の取得が重要であり、情報を毎日確認しなければ営業できない環境に置かれている。共通契約書様式の変更や法令改正、教育トレーニング開催情報、統計情報などをMLSサイトやブローカーから入手している。

この背景には、00年以降のインターネットの普及や物件情報の拡充がある。情報提供の充実による多様化する消費者ニーズへの対応や顧客との信頼関係構築の重要性が高まった。購入希望者に対する売却価格分析報告書の作成や各専門家とのネットワークによる顧客へのサービス提供といった営業上の実務能力の向上が従来以上に求められているのだ。  エージェントの資格制度は州政府が制定している。各州政府は、不動産関連ライセンスの質の確保や教育、資格試験の運用サポートを行う専門協会、ARELLO(Association of Real Estate License Laws Officials)と契約締結し、ARELLOが不動産ライセンスの試験内容を作成している。

試験内容や試験頻度、更新、教育制度などは州によって異なるが、各州とも試験は頻繁に行っており、業界への参入規制を低く設定している。一方で、ライセンス取得者のスキルを維持、向上するための継続教育を義務化。試験前後やライセンス更新ごとに数十時間に及ぶ講習受講が必要になる。

ワシントン州は、2年ごとの更新制だ。受験前後にはそれぞれ90時間、更新する2年ごとには30時間の受講が求められる。講習では、法令以外の営業上のマナーやコンプライアンスなどの教育を地域のリアルター協会(NAR)やMLSとともに、ブローカーが実施。一定の実務経験を経て、営業管理責任者としてのライセンスを取得したブローカーが日々、所属エージェントの教育に努めているのが米国の仕組みの特徴だ。

ある不動産ブローカーの会長から伺った「ブローカー自身が、消費者や顧客のためにという日々の正しい心の持ち方(Right Mindset)をエージェントと共有し、実行すればビジネスは必ず成功し、業界が発展する」という言葉が印象に残った。

日本でも不動産流通業界への消費者の期待の高まりから、仲介業務はますます高度化している。宅建業者や従業者の知識の習得・能力向上に加え、コンプライアンスや従業者管理能力などについて、協会や企業における研修の更なる充実を期待すると同時に、行政の後押しが必要であると考える。

(2012年6月12日 国土交通省不動産業政策調整官(当時)小林正典)

© 2016 JARECO ( Japan America Real Estate Coalition Office ) All rights reserved.

Navigation

Social Media