第三回:流通革命につながったMLS ー情報提供充実で市場が急成長

全米には約900のMLS(Multiple Listing Service)が存在する。不動産エージェントへの物件情報搭載ルールの徹底や各種履歴情報サービスとの連携で透明性の高い充実した情報提供を実施している不動産物件情報提供システムだ。第3回は、小林正典不動産業政策調整官が「米国流通革命のキーポイント」と力を込めるMLSの機能や役割を解説してもらう。

 MLSはいわば不動産業者の営業支援を行う民間会社だ。地域の物件情報の提供のほか、事業者教育、キーボックスの販売、契約書の標準化、事業者のルール遵守の徹底・指導を行っている。不動産事業者は各地域のMLSに加入しなければ営業できない仕組みで、事業者はほぼ強制的にMLSが定めたルールに従った不動産取引を実施。消費者利益実現に取り組んでいる。
調査を行ったワシントン州の場合、州政府が決定する売主の告知書の様式以外の標準統一様式はMLSが決め、全事業者に使用を義務化。また、物件情報の24時間以内の掲載の徹底やポケットリスティングの禁止(商談中を続けた場合のMLSからの追放などによるステータス管理)、意図的な誇大広告への罰則などを行う。こうしたルールの徹底は、消費者保護を担うと同時に、MLSにおける物件取引に関する情報の高い透明性を維持する役割を負っている。
MLSの情報提供が充実している背景として、全米のあらゆる不動産物件の履歴情報サービスと連動している点も欠かせない。これにより、過去の売買履歴や周辺の地域情報、地盤情報、市場分析レポートなどを入手することが出来る。消費者が安心して購入判断が出来る最大の理由であり、取引の活性化や市場を急拡大させた要因となっている。
MLSの役割を語るうえで、運営組織が販売するキーボックスの機能にも触れておきたい。米国では90年代後半以降、物件情報提供システムの向上に併せて、キーボックスの標準化が進められた。
キーボックスを活用することで、買い手エージェントはオーナーからの鍵の受け取り・返却の手間が省け、一日に複数の物件を案内することが出来る。また、案内時に解錠されたキーボックス情報は、売り手側へメールやWebで伝達される。自分の物件がいつ誰によって案内されたかが分かり、迅速な売買交渉の開始を可能にしている。不動産業者の営業活動の合理化や販売促進に役立っている。
MLSはどのように運営されているのか。ワシントン州シアトル・キング郡を例にとると、州内16の事務所で地域の2200社の不動産会社や約2万3000人の不動産エージェントに関する営業支援や情報提供などを実施している。サイトの運営や情報の充実、更新も行っている。運営経費は、毎月ブローカー(企業)が$40、エージェント個人が$30の会費を負担するほか、キーボックスの販売や研修の利益、各種書籍、情報販売収入などで賄っている。
全米リアルター協会(NAR)サイトには、現在14カ国が参加し、年間1100万超の物件情報が全世界に提供されている。今秋にはNAR日本オフィスが開設予定だ。不動産の国際取引が活発化する中、物件情報の整備・提供の国際的な動向を注視するべきだ。それと同時に、国内不動産への投資・流通促進策の戦略が急務だと考える。

 米国の不動産流通革命に欠かせないMLS。日本の消費者がこれを見たときにどう反応するだろうか。物件情報の整備・提供のグローバルスタンダードについての議論も必要だろう。

(2012年6月5日 国土交通省不動産業政策調整官(当時)小林正典)

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